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Where abouts of the terminal inc.
2022年に原宿へのオフィス移転をはたした「terminal Inc.」。新規事業のオープンを控えた同社の取り組みや、社長の中田さんをはじめとしたメンバーの思いや考えなどを、ざっくばらんにお届けする記事企画です。 第一回は、京都で開催された中田さんとの「飲みながらインタビュー」。だんだんと酔いが回っていく中田さんの深~い話を、ぜひご一読ください。
Author :
Myogaya Nobuhisa
京都在住のライター・ディレクター。旅行雑誌や旅行サイトなど、旅行関連の記事・広告を主に担当。唎酒師、合気道三段。
https://kyotomyogaya.com/
First story
全裸社長の見る夢は
#chapter1 京都より。
ナカダさんと初めて会ったのは、確か京都だった。今はもう駐車場になってしまった町家の事務所に黒いコートでさっそうと現れたナカタさんは一流デザイナーのオーラを纏っていた。えらいかっこええなぁ、年下やのに…。そんな風に思ったことをよく覚えている。
前職でチームメイトだったイシイ君がterminal.incに入社してからの縁で、もう、10年近くになると思う。京都の事務所でビール片手に雑談したり、ちょこちょこ仕事でからんだり。
知人以上、親友未満。
僕にとってのナカダさんは、そんな距離感の人だ。
少し遡って2022年初夏、千駄ヶ谷のterminal Inc.旧オフィス。
「会社のことや、将来のビジョンについていろいろ発信していきたいんですよね。」
久々に会ったナカダさんから、対外的な情報発信の手伝いを依頼された。
なんで僕に?と聞いてみたら、僕のnote記事を全部読んでくれた上で声をかけてくれたとのこと。二つ返事でお受けすることにした。
それから、例の感染症の影響などでなかなか会う機会が作れずにいたが、2022年11月16日、京都駅近くのリド飲食街。昭和の匂いがする串カツ屋のカウンターで、ようやく僕らは膝を突き合わせることになった。
# chapter 2 ナカダのナカミ。
「こんなトコ、あったんすね。」京都にはちょくちょく来ているけど、ここは初めてとのこと。誰かと打ち解けて話をしたいときは、なぜか昭和な店がしっくりくる。
情報を発信する、という事以外は特に何も決まっていないまま、ゆるゆると僕らの会話はスタートした。
「思えば遠くへ来たもんだなぁ、って。わらしべ長者よろしく、友達や知人の仕事からどんどん大きな仕事になって、仲間も取引先も増えて。気づいたら会社になって、売上規模も大きくなって。」
「でも、ふとこのままでいいんだろうか?っていう思いがよぎったんですよね。」
「デザイナーって、実は職業寿命が短いと思っていて。このまま座して死を待つか、それとも何かやってから死ぬか。そんなことを考えて、オフィス移転や新規事業にトライすることにしたんですよ。」
その気持ち、よく分かる。好きな仕事だし楽しいけれど、ずっとこのままではいられない。そんなじりじりとした焦燥感、僕の胸にもずっとある。
それでも、原宿の一等地にオフィスを移転して、家賃も4倍近くになって、さらに新規事業にも着手するって…マジですか。このご時世によくそんなリスキーなことするなぁ…って思ったのが正直なところ。
この人の頭のなか、いったいどないなってんねやろ?もうちょっと深くナカダさんの中を覗いてみたくなった。
― なんでデザイナーになったの?
「高校時代に仲のいい友達が美大に行くって聞いて、じゃ俺も!みたいなのがきっかけですね。」
「当時、ぜんぜん勉強したくなくて。勉強は上には上がいるし多分勝てないけど、美術方面だったらいけるんじゃね?って。割と軽い気持ちで美大受けましたね。1浪2留で、結局中退しちゃいましたけど。」
― デザインは好き?
「好きですね。僕のやることの中で、唯一褒めてもらえることなので。」
「もともと絵を描くのが好きで。マンガのキャラをトレースしたり、オリジナルのキャラをつくったりして友達を喜ばせていましたね。」
「ただ絵を描くだけじゃなくて、人との関わりの中で、自分の得意を発揮していることが大事だったのかも。」
― 人づきあいは好き?
「普段はあんまりしゃべらないけど、幹事が好きなタイプ。幹事つとめがち。」
「声かけて人を集めて、最初乗り気じゃなかった人が。やってみたら楽しかった!ていうのがうれしいですね。」
― そう思うようになったきっかけは?
「もしかしたら、両親の影響かも。小さなころに家に人がたくさんいたんですよ。わいわい、ホームパーティー的なのがよくあって。近所の大人に描いた絵を見せびらかしてました。」
多感な時期に、家族以外の人が家にいて、彼らと過ごした記憶がポジティブに彩られていた。そして、自分の得意なことで誰かを喜ばせることが、自らの喜びになっていた。
なるほど、少し見えてきたぞ。
みんながワイワイ集まることで、何かが生まれる場所づくり。そこでいろんな人に出会って、得意を活かしてもっと世の中の役に立つ。
そんなことがしたいんだな、きっと。
ナカダさんの人生を賭けたチャレンジは、どうやら彼の「原点」と深くつながっているみたいだ。
#chapter3 楽しいのカタチ。
盃は進んで3杯目。僕は日本酒、ナカダさんはレモンサワー。
銀皿に追加されたアスパラとししゃもの串カツに、ナカダさんがたっぷりソースをかけてくれた。
―新規事業の具体的な中身は?
「3階はシェアオフィス、2階は飲食店です。」
なんか目の輝き違うやん、めちゃ楽しそうやね。ほんでほんで?
― もうちょっと詳しく。
「別にバーのマスターがやりたいわけじゃなくって。ブランドを作りたいんすよ。」
「ブランドロゴのTシャツが売れるとか、伊勢丹のポップアップに呼ばれるとか…。ブランド同士のコラボが生まれるとか…。そんな世界を目指したいんですよ。」
「最大公約数的な素敵さと、趣味趣向に突っ走った世界感。どっちも実験してみようかなって。」
「3階の空間は、誰もがいいねっていう空間。2階は『何それ?』みたいな感じにしたい。」
「自分が好きな音楽とかHip hopカルチャーをミックスして。そういう自分たちが心から良いと思えるものをやりたい。」
イメージ溢れてきてるやん!いいなぁ、なんか体重乗ってて。
確かに原宿って場所を考えると、そんぐらいとんがってるのもアリかも。あんまり原宿のこと知らんけど。
これまでの人生で出会ったものが混ざり合って、ナカダさんの「楽しい」がカタチになっていく。いったいどんな場所が生まれるんやろう?めちゃめちゃ楽しみだ。
#chapter4 全裸社長の胸のうち。
ちらとスマホに目をやるナカタさん。今日中に東京へ戻るそうで、最終の新幹線の時間をチェック。
残り約1時間。お互いすでに酔いが回ってるけど、
もうちょっと深くまで降りていけそう。
― 不安になることはない?
「もちろんありますよ。一人になったら、ホントに大丈夫かなこれ、って思います。」
「でも、やっぱり楽しいことをやっていたいし、心がときめかないことは、なるべくやりたくないんですよね。」
「以前やった飲食店のブランディングの仕事は、単純にめちゃくちゃ楽しんでやったんですよ。それがSNSでバズって、お店もオープン初日から行列ができて。」
「そういう方向で波長があう人たちが集まって、新しい何かが生まれるようになると最高ですよね。『お前らこういうこと好きだから、こういうのやれるでしょ』みたいな仕事の頼まれ方ができたら嬉しいです。」
なんか、ええ感じで先までイメージできてるなぁ。やっぱかっこええなぁ、年下やけど。
― ぶっちゃけ若いときからモテたでしょ?
「ぜんぜんそんなことないですよ。小さいころは背の順もずっと一番前だったし、サッカーでもずっと補欠で。」
「幼少期はコンプレックスのほうが多いかも。だから人の弱い部分とか、とてもよくわかる。毎日お祭りじゃいられないってのもわかってます。」
― それでも前に進むのはなぜ?
「無理して祭りを続けてる、みたいなところも、ちょっとあるかも。気乗りしない日もあったりするけど、そういうキャラでいるほうがいいかな、みたいな。」
―まとめ役がアイデンティティになってる?
「そうかも。みんな仲がいい、仲よくいるってのが最強の組織マネジメントだと思ってますね。」
「パワハラとかセクハラとかって結局、関係性とか距離感によって変わると思っているし。」
「社内でも結構下ネタを言っちゃうし、時々おならだってしちゃう(笑)。極端かもしれないけど、まあ家族とか友達みたいな、そういう距離感は意識してますね。」
お、だいぶ脳がゆるんできてる?でも、これがナカダさんの地なんだろうな。
― 人との距離感で大切にしてることは?
「自分から開いていくことですね。」
「ちょっと昭和チックかもしれないけど、やっぱデザインって数こなさないと上手くならない部分もあるし。」
「若い子らに長く働かせたいわけじゃないけど、プロジェクトをうまくいかせたり、みんなが当事者意識を持って仕事するには、僕ら上の人間から実践していかないと、と思う。」
「楽しそうにふざけてみえるけど、社長ら、なんか熱くがんばってんな~みたいな。みんなも『カモン!一緒に踊ろうぜ!』みたいな(笑)。」
「まずは自ら裸になっていくのが大事かなって。下の子たちが進んで裸になりたくなるぐらい、覚悟を持って僕から●●コ出していきますよ。」
…と、話にだいぶ酔いがまわってきたところで終電の時間がきて、本日の会は終了となった。
実は、ここでは書けないような若気の至りや赤裸々なプライベートも包み隠さずさらけ出してくれたナカダさん。
僕はそんなアナタを「全裸社長」と呼ばずにはいられない。
社員の前でも、クライアントの前でも、きっとこれから出会うであろう人々の前でも、その裸の心のままで、たくさんの楽しいをカタチにしていくんやろうな。
充実感と軽い嫉妬と、どうやって記事にまとめようかな…という不安がないまぜになった複雑な胸で、僕は帰路に着いたのだった。
→続く。(公開したらお知らせします)